2010年 05月 15日
フィリップ・クリルスキー著 「利他主義のとき」 から (II) |
この本の構成は以下のようになっている。
緒言
第一部 現実の性質について
第1章 科学の対象
第2章 一般的な対象
第3章 一般的対象の知
第4章 まとめ
第二部 人間の責任について
第5章 倫理の動員
第6章 自らを探求すること、他者を探求すること
第7章 個人責任の理論
第8章 集団責任の理論
第三部 理論から実践へ
第9章 理性の限界
第10章 経済と利他主義
第11章 地球規模の問題の解決
第12章 利他主義と政治:利他主義的自由主義へ?
結論
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この本の出版に合わせた彼のインタビューが Canal Académie (7 mars 2010) のサイトにあるのを見つける。興味ある方は、こちらから。
その中で、危機や人間の不幸・悲惨に対処する安定したシステム構築について質問され、親切心と利他主義の違いについて論じている。
難しい問題だがと断った上で、彼はアマルティア・センさんの概念としての(絶対的な)自由 La liberté と個々の自由 Les libertés の違いと同様に考えたいとしている。親切心とは、個人の自由の範囲の中での態度になり、親切な行いが成されることもあるし、そうでないこともある。個人の自由に任されている。善意という言葉で表わされるものと重なりそうだ。それに対して利他主義は義務の色彩が強くなる。人間に課せられた考え方として捉えなければならないとしている。
したがって、システムを人の親切心に委ねた場合には不安定なものにしかならず、時として背後にある悲惨を覆い隠す役割 (cache-misère) さえ果たすことになる。安定したシステムを維持しようとした場合には、利他主義が必要になると彼は考えている。それはわれわれに考え方の大きな変更を迫るものになるだろう。
by paul-IP
| 2010-05-15 11:52